九階の麻布オフィスの窓越しに、外をみる。
東京のビルの谷間の通りが、雨にぬれて、鈍く光って、長く延びている。六本木の大道りに通じる細い裏通り。
そこを鮮やかな色の雨傘を、クルクル回しながら行く細身の若い女性の姿が、小さく見える。
タクシーが、その傘の側を、ゆっくりと走り抜けていった。
昔読んだ太宰治の短編の「満願」を思い出した。作品のなかの和服の女性が、日傘をクルクル回す映像が、今でもよみがえる。
先ほど、麻布オフィスを出ていかれた年配の品のいい夫人の姿が重なる。
「足元が悪い日ですから、くれぐれも、お気をつけて」と私。
「こういう日も有り難いですよね。気を付けて歩くと言う、格好のいい訓練にもなりますしね。それに、雨の風情も、捨てたもんじゃありませんから」
74才になる彼女は、若々しい仕草で、くつをはき、上品に笑みを浮かべて、語った。横浜から、二時間かけて「量子波ヒーリング」のために、来られたのです。
この言葉に、このかたの秘密があると、感動しました。今年の夏にガンが見つかり、ついに大学病院での手術をすることなく、自ら、そのガンを、消滅させた方なのです。
太古の波動の記憶をもつクジラの音楽と大地の優しさと宇宙とのハーモニックなハミングの音を、微かに流して
ご自身で「クォンタムヒーリング」のバイオ高波動カードを身につけた空間で過ごす。
時間が止まったようなひととき。
しばらくすると「先生、なぜか、かってに涙が出てきます。ごめんなさいー」
「どうぞ、気楽にされて、あるがままでー」
といいながら、この方には、この言葉すら不用かも知れないと思いました。
戸籍年齢とは関係ないヴィヴィッドな感覚・感性ーそれこそが、根源的ないのちの現れではないのか。それこそが、「クォンタ」の世界ではないのか、と思いました。だから、この夫人は、病を自ら、治しえたのでしょう❗
ニュースで、重い雨雲が、関東に急接近中です、といっている。しかし、それも、彼女にとって、現象の一つの遊びとしての意味しかないでしょう。
受け入れることに感動のむらっち